2016年6月22日水曜日

VOL・116 レディメイドの限界  2010・08

レディメイド(既製)のスーツやジャケットシャツに限界を感じて久しい。

弊社が販売するスーツなどの9割近くはオーダーメイドである。

ただし、各社のオーダー服をすべて良しとは思っていない。

その理由は、購入の際、目の前にある既製服ならば、取っ替え引っ替え試着して妥協案を

見出すことは出来るし、目に見える現物であるから、気に入ったものを入手すれば良い。

翻ってオーダーの場合、採寸する人と縫製する職人のセンスと力量が服に表れる。

だから、オーダーの方が良いとも言い切れないのだ。

人の骨格や肉付きの平均値から既製服のサイズは決められる。

さらにデザイン的な寸法が加味される。各サイズはグレイディングを経て決定される。

グレイディングとは、型紙を拡大したり縮小したりする作業で既製服のサイズ展開には

欠かせない。しかし、この作業で決められた細かいサイズはあくまで平均値であり、誰に

でも合うようで、実は誰にも合っていない。太ってしまった人を例にとると、首が太くなり、

腹囲も大きくなるが、背中や袖丈はさほど変化しない。

スラックスの場合でも、ウエストが大きくなるとヒップも比例するが、渡り(太もも)はあまり

太くなることはない。腹の出たオヤジの既製スーツは、肩は落ちるわ、ズボンは太いわとなる。

お直しでこれを補正するしかない。全パーツの縮小拡大を行うオーダーと、既製服のお直しは

根本的に異なるものである。寸法合わせのお直しは、服の軸を狂わせてしまう。

よく既製服の方が格好いいと言う話を聞くが、既製服と注文服が別の人の手に依る物を比較

しているケースが多い。両方が同じ手で作られるならば、あり得ない事である。

つまり、ブランド服と旧態依然とした昭和的オーダーの服を比べてしまっている。

スキルを積んだ作り手に委ねれば、着やすく格好いい服が誕生する。

0 件のコメント:

コメントを投稿