2016年6月22日水曜日

VOL・120 10年後の未来  2010・12

00年の年末、出張で東京にいた。本誌編集長が私の携帯を鳴らした。

「来年、1月号から掲載したいので、原稿お願い!!」と、

何とも唐突な話ではあったが、一応了承する旨を伝えた。

ホテル備え付けの便箋に書き下ろしてFAX。

文字数等もテキトーなまま、校正するまもなく一発掲載。あれから10年が過ぎた。


スーツというものの定義を再度。ジャケット・ヴェスト・トラウザーズの3点。

あるいはヴェストなしの2点で揃いの生地で仕立てたもの。

オフィスワーカーの服装として確立されたのは30年代後半である。

形状としては19世紀末には存在するが、上下共地ではなかった。

スーツの未来を誰が想像し得たであろうか。

条件が揃えば、男性服の中で最もエレガントなものがスーツである。

条件とは時・場所・場合。季節や時刻。自社も含めた訪問先。天候や職務内容。

ただ、これらは外的条件である。もうひとつ忘れてならないのが、スーツそのものが持つ

内的条件だ。カット(パターン・裁断)、色、生地であるが、列記した順に優先する。

どんなに色柄がよく高級素材であってもカッティングの悪いスーツに妥協するのは良くない。

逆に言えば、少々意地が悪くてもカタチの良い物を買い求めるべきだ。

百年ほどの歴史を経て、生地も副資材(芯地など)もずいぶんと軽くなった。

最近でこそ、地球温暖化や空調の発達が一因とされているが、元来、服装そのものが

カジュアル化の歴史を辿っていることも否めない。軽いスーツの製造にかけては、英国よりも

イタリアのほうがリードしている。我々もそれに憧れ、標榜してきた。スーツの聖地、英国

サヴィルロウ。難攻不落と思っていたが、今やテーラーが姿を消し始め、再開発の危機に

瀕していると聞く。先達の技術と若いエネルギー、10年後の未来に期待したい。

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