2016年6月22日水曜日

VOL・122 エヌからの出発  2011・02

1着の上衣、スーツあるいは単品ジャケット。採寸や型紙の上での起点となるところがある。

ネックポイント(以下、NP)である。ジャケットのポケットや釦の位置を決めるとき、裾廻りなどから

測る人が多い気がする。 しかし、ジャケットなどの型紙上の寸法、サイズではなくディテールの

位置関係はすべてこの点を中心に決められている。胸ポケット、脇ポケットや釦の位置などがそう

である。服屋に行ってポケットや釦の位置をNPから測っていれば、安心して任せていいかも

しれない。
 
じゃあ、そのNPってどこよ?

上衣の衿をちょっとめくって、肩線が首廻りと交わるところだ。両サイドにあるからサイドNPで

話は通じる。 通称、「エヌ」とも言う。「テイラーの恥」と言われる突きじわ。

いかり肩や前肩、屈伸の背幅不足など要因は様々であるが、このしわもNPが着手の体のNPと

一致せず、服のNPが前方に行こうとする為に衿ミツ(背中心上部)が押されて発生する。

着づらい服は、原因は色々でも結果としてヌードと服のNPがずれていることが多い。

NPから両肩先向かう肩線。高級服の場合、肩線は前身よりも後身の方が長いものをイセ込んで

同じ長さに縫い上げる。後身が元に戻ろうとする力で肩線が前に湾曲する。この線は肩の綾線に

添った接ぎ線であるが、デザイン的に位置を変更しても着心地には影響しない。NPから肩線を後

ろにもっていくクロスショルダー(肩線バック)。これは本来肩廻りに集中する複雑な造作を避け、

後身はなるべく構造が簡単な一枚の布として作り、肩甲骨の膨らみを出しやすくしたと思われる。

現在では一つのデザインとなっているが、肩線にかかわらずNPは同じところにある。

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