2016年6月22日水曜日

VOL・132 人体とスーツ  2011・12

平均値で製造される既製服のスーツ。

フィッティングをして補正が行われるのだが、いわゆる寸法的補正のみが行われることが多い。

つまり上衣なら袖丈、着丈、胴回りなど。組下なら、股下、ウエスト、渡り幅など。

長さと幅の補正に過ぎない。平均値における標準体の既製スーツは、身長×0,47が

ウエストサイズといった感じである。さらに胸囲と尻囲は同じになるのが標準的体型だ。

次に既製スーツでは、パスしてしまっている体型の補正について。

標準的な体の線の考え方を示してみるが、該当する人は少ない。まず。肩傾斜。

首のつけ根の第七頸椎から肩先は7cm下がるのが基準。この数値が小さければ一般より

いかり肩、大きければなで肩ということになる。そして体を側面から見てみる。

身長計の支柱あるいは垂直な壁に背中をつけている状態をイメージして欲しい。

後頭部の次に接触するのが肩甲骨である。先の第七頸椎は壁から6cm離れるのが標準。

これを「首入り」という。衿の後ろのつき皺や衿抜けの原因になる反身体や屈伸体が

認められても、既製スーツでは前身と後身のバランスが崩れたまま着用しなければならない。

さらにウエストの位置は5cm離れる。それを「腰入り」という。同様に「尻入り」は1cm程度。

背中のこの曲線が合わせられれば、スーツのオーダーの第一関門突破。

よく出来たマネキン(派遣販売員ではなくディスプレイ用ボディ)は概ねそのように作られている。

既製服はスーツに限らず、標準的な体型で作られている。寸法の補正だけでは人体という

立体に美しく添う服にはなり得ない。正面から姿を見る場合、左右対称である身体の中心軸は

誰にでも理解できる。横から見た時の肩、胸、腹、背の姿勢の軸には着手も売り手も

関心が薄いのは何故だろうか。スーツ姿は全方向から見られていると思うのだが。

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