スーツ(あるいは服全て)というものはあくまで着手を引き立てるべき物である。
物として独り歩きをしてはならない。
クラシックスタイルの服は本来、注文服を中心として手仕事が主で、好事家、裕福層にしか
入手できなかった。その対極に合理化し量産を行う既製服があったのだが、注文服の作り
込みを盛り込んだ準注文服とでも言うべき服が出現している。
前号で三位一体という話をしたが、テーラーと顧客には相性がある。両者の考え方が一致
しないところに価値は生まれない。完璧なことを言えば、注文服に止めをさすが、その店の
同じ思想に依る既製服にはお買得が多い。平均寸法で作られた服だけに、サイズが合う方
にはお薦めできる。
美が中心とされた英国服から、軽さと巧みな加工を施したイタリアのクラシックスーツ。
私のところでは、この春から両者の良いところを組み合わせたスーツを販売する。
つまり、イタリア的な技術、手法で英国風のルックスを表現してみたいと思っている。
当然、注文服に負けない「準注文服」である
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