死語になりつつある背広という言葉で、スーツ(背広)のルーツを探ってみる。
日本では三つ揃え(スリーピース)もツーピースもジャケット単体でも「背広」と表現される。
語源としては、形・種類・地名の3説あるとされている。
まず形から。その名の通り背が広い、もしくは背のパーツが広いから背広と呼ばれる説。
モーニングコートなどは三つの縫い目で裁たれているが、現代のスーツは、背中が背中
心で裁たれた二つのパーツで構成される。背中をやや大きく仕上げるとともに、パーツも
少ない分だけ大きい(広い)物となっているから背広と呼ぶ説がある。
次に服の種類からの説。日本にとって最初の洋服は軍服であり、制服として普及してい
く。ミリタリークローズに対してシビルクローズ(市民の服)がなまって背広と呼ばれるよう
になった。
最後に最もポピュラーな地名を語源とする説。ロンドンはセビルロー(Savile Row)に由来
する。高級注文洋服店数十店軒を並べるこの通りでは、世界のセレブリティがスーツを
誂えていた。百メートルちょっとの裏通りだが、路面店として軒を連ね、一階が店舗、地下
が工房になっている。全盛の頃に比べると店舗数は少なくなったようだが、ロンドンのスト
リートの中でも比較的静かな通りである。明治の初頭の有力者が、セビルロー仕立てを
吹聴したのがセビロという言葉を生み出した。
スーツとしてはあまり構造物の無い背中が呼称になったことは興味深い。背が広いと書
いて「背広」と表記・発音されるのは、諸説が合わさったと考える方が、語源を補完できて
おもしろい。
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