2016年6月16日木曜日

VOL・35 釦・ボタン  2003・11

今さら釦と思われるかもしれないが、それひとつでスーツのニュアンスは一変してしまう。

他の構造物の芯地や肩台(パッド)などはスーツの性能を決める大事なモノであるが、目

に見えないから余程マニアでない限り、テーラー任せといったところだろう。本題に戻って

釦のはなし。良質なクラシックスーツには、主に天然素材の釦が用いられる。

最も多く用いられるのがナット釦。椰子の実の種の胚乳が象牙質で、釦の材料になる。

南米エクアドル産のタグワ椰子を用い、正確な手作業で制作される。着色して使われるの

で、一見プラスティックに見えるが、よく見ると微かに木目が感じられる。これが植物から

採取された物かと驚いてしまう。

次にホーン釦。ナット釦が植物から作られるのに対して、こちらは水牛の角を加工した物。

インドやタイなどが原産国である。ナット同様に削りだして整形するが、色は天然のままを

仕分けして用いるので、アメ色から黒褐色まで焼く5色ぐらいに色分けされる。ナットと異な

り、均一色でなく少しブチが入った感じが好きな人も多いはず。

その他にも天然素材の釦として、冬のツイードに合う革のバスケット釦などがある。

開きを留めるだけの機能を果たすだけなら何でも良いのだろうが、クラシックなスーツの控

えめな上品さを演出する役目としては、ナット釦かホーン釦に止めを刺す。量販店のスーツ

の釦は1個10円もしない安い物ですよ。そんなスーツでも釦を総取っ替えするだけで少し高

級に見えるから不思議。掟破りにも限界があるから精々そこまで。生地や縫製、釦など付属

のバランスが取れてこそグッドスーツといえる。

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