2016年6月16日木曜日

VOL・39 クセ取り  2004・3

昨今のメンズ雑誌のスーツ特集を見ているとかなり専門的な内容になっているようだ。

店頭でのセールストークをはるかに超えて、ファクトリーの専門用語にまで及んでいるから

販売員の方たちも同時に学んでいるケースも見受けられる。

そんな雑誌の特集では、しばしばクセ取りなる用語が登場する。クラシコイタリアに始まる

高完成度スーツの出現で、クセ取りはスーツ作りの重要なポイントになっている。いかに体

にフィットして着やすいスーツになるかは、クセ取り次第といってもいい。

クセ取りとは、平面であるパーツをアイロンワークでクセをつける。つまり立体的に形作るこ

とを言う。生産工程の中で中間プレスと言われる作業である。この工程の回数が多く、時間を

掛けて作られるスーツほど、立体的になるので同じ寸法でも大きく感じられて着やすくなる。

具体的にクセ取りが最も効果をもたらすパーツにカラー(上襟)がある。平面的な上襟は首

に必要以上の力を与え、疲労感をもたらす。首に吸い付くように登っていくシルエットを出すに

も、アイロンによるクセ取りで、立体的に作ることが必要とされる。そうすればアームホールや

ショルダーラインの出来にも依るが、腕を上げても、上襟は首に吸い付いて離れない。小さな

パーツだが、着心地にも、見た目にも大きな役割を果たす。

着用感には影響ないが、バルカポケットと呼ばれる船底形のカーブをつけた胸箱ポケットが

ある。胸の丸みに沿った美しいラインを表現する。イタリアの職人たちの遊び心と技術の賜物

だ。ここにもアイロンワークが生かされている。

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