昨今のメンズ雑誌のスーツ特集を見ているとかなり専門的な内容になっているようだ。
店頭でのセールストークをはるかに超えて、ファクトリーの専門用語にまで及んでいるから
販売員の方たちも同時に学んでいるケースも見受けられる。
そんな雑誌の特集では、しばしばクセ取りなる用語が登場する。クラシコイタリアに始まる
高完成度スーツの出現で、クセ取りはスーツ作りの重要なポイントになっている。いかに体
にフィットして着やすいスーツになるかは、クセ取り次第といってもいい。
クセ取りとは、平面であるパーツをアイロンワークでクセをつける。つまり立体的に形作るこ
とを言う。生産工程の中で中間プレスと言われる作業である。この工程の回数が多く、時間を
掛けて作られるスーツほど、立体的になるので同じ寸法でも大きく感じられて着やすくなる。
具体的にクセ取りが最も効果をもたらすパーツにカラー(上襟)がある。平面的な上襟は首
に必要以上の力を与え、疲労感をもたらす。首に吸い付くように登っていくシルエットを出すに
も、アイロンによるクセ取りで、立体的に作ることが必要とされる。そうすればアームホールや
ショルダーラインの出来にも依るが、腕を上げても、上襟は首に吸い付いて離れない。小さな
パーツだが、着心地にも、見た目にも大きな役割を果たす。
着用感には影響ないが、バルカポケットと呼ばれる船底形のカーブをつけた胸箱ポケットが
ある。胸の丸みに沿った美しいラインを表現する。イタリアの職人たちの遊び心と技術の賜物
だ。ここにもアイロンワークが生かされている。
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