2016年6月16日木曜日
VOL・40 土台づくり 2004・4
いいスーツを作り上げるポイントは、前号で述べたクセ取りに加えて芯作りと芯据えである。
立体的に作られたスーツは、平らな所に置いてもその形状を維持し、着用時にも襟から胸に
かけて十分な張りを形づくる。それを見えない部分で支えるのが芯地である。接着芯を用いる
安価なスーツは立体感を表現しづらい。それぞれのスーツの形状に合わせて誂えた本毛芯を
用いるのが望ましい。毛芯縫製では、生地の特製(厚薄・柔軟)に合わせて芯据えをしていく。
毛芯の材料は、主にウールと馬の尻尾の毛、リネンやキャメルヘアである。天然素材の芯は
天然の表素材と歩調を合わせて、温度や湿度の変化に対応する。
いいスーツは、芯作りと芯据えを土台として手作業を駆使しながら、熟練した縫製とアイロンワ
ーク(クセ取り)によって形作られる。柔らかく返るラペル(下襟)と丸みを帯びた立体的なボディ。
美しいシルエットは、後姿にも風格を与える。
芯地と表地の一体感を得て完璧に作られた前身が後身につながる肩線は後身をイセ込んで
自然な前肩を作る。イセ込みという技術は寸法の違うパーツを縫い付けていく作業で、スーツは
さらに立体的になり、腕を前に出す動きにしなやかについてくる。さらに肩に対してイセ込んで付
けられた袖は、アイロンでクセ取りをして、美しい曲線を描く。立体的に作られた服は、実寸法よ
りも細身に写るものである。
広い肩幅、胸の大きいゆとり、太い袖とアームホールのスーツが楽だと考えるのは間違いで、
最も疲れる服である。無論、小さすぎるのは窮屈だが、程良いサイズのスーツは体の動きに
フィットして歩き姿さえも美しく颯爽と見えるものである。
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