2016年6月16日木曜日

VOL・45 スーツとドレスシューズⅢ  2004・9

スーツのはなしで、これ程靴にこだわるのか。

ネクタイと同じく靴がないと、スーツの着こなしが完成しないからに他ならない。

ネクタイには機能はないに等しいが、装飾的要素を考えるとなくてはならないものである。

ところが靴となると歩行という機能がついてくる。履き心地、フォルム(木型)アッパーデザインと

相当奥深いものがある。初対面の時、スーツ以上にパーソナリティを表現するのが靴とネクタイで

はないだろうか。この二つのパーツが表現する、大袈裟に見せず自然な感じこそエレガンスという

ものだと思う。暴力的でなく存在感があり過ぎない。簡単に言えば、嫌らしさが無い事が望ましい。

靴を磨くという事は、男を磨くという事と同義である。布帛のアイテムと異なり、皮革製のベルトと


鞄と靴は、使い込むほどに味が出る。少し草臥れてきた物をクリームやワックスで手入れをした風


合いは布には表現できない。磨きすぎて光りすぎもダメで、爪先と踵のみ鏡面仕上げをして、使い


込んでいるけれど手入れが行き届いているという感じが出せたらいい。最近のアンティーク感覚の


仕上げなど、新品のうちからそれを表現している。まさに小さな宇宙というか、感受性がギュッと詰


まっている。


ベイシックなコーディネイトをイメージしてみる。上衣はネイビージャケットパンツはミディアムグレ


ー、シャツは薄めのブルー、ネクタイは紺赤緑の渋めのストライプ。そして靴は中茶のモンクストラ

ップ。天気予報で雨の心配がなければ、茶のスウェードのストレートチップ。洗練されたハーモニー


を感じる。一つ一つの完成度が高ければ、凝ったコーディネイトなんか不要というお手本の様なも


のだ。センスとは複雑なものでなく、意外とシンプルなものなのだろう。無意味な買い物が、あなた

感性を複雑化し、収まりがつかなくなっているのかも知れない。

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