2016年6月19日日曜日

VOL・48 制服  2004・12

スーツは世のビジネスマンの制服と言えなくもないが,御仕着せの窮屈な物と考えるか、

ひとつの憧憬(あこがれ)やプライドの表現と見るか、それぞれの着手の思いで違ってくる。

ある程度の抑制の中でこそ、スーツは輝くものであるからだろうか、全く自由で良いと思っている

人ほど、意外とお洒落のレベルは低い。

軍人や警察官に始まり、料理人のコックコートなど、颯爽と仕事をこなす人々のコスチュームは、

階級をも表現すると同時に、下級の人たちから見ると憧れである。

私の所の価格帯のスーツとなると、会社の制服で、という訳にはいかない。


ここ大名地区では、中州に次いで飲食店が多く、有名なバーも数多い。

バーテンダーの制服といえば、タキシードかブラックスーツが主で、そのほとんどが制服業者が

納品する比較的安価な物のようだ。
 
八月の中頃、バーの制服を作って欲しいという依頼が舞い込んだ。


個人的には、福岡で最も腕のいいバーテンダーのひとり、いや、ふたりと信じてやまない

「デュラン」の中原兄弟である。日本のバーのレベルは世界的にも高いと聞くから、

世界に通用する腕の持ち主だと思っている。九月に移転オープンするのを契機に、

制服としてスーツを作りたいと言う。兄の英司は黒、弟の義信は白、それぞれ二着ずつ。

着手を引き立てる為の服作りは、日常的にやってきたつもりだが、今回は少しニュアンスが違う。

彼らの実力を見てくれがマイナスしない様、いろいろと考えながら作らせてもらった。

制服という事で高価な生地は使えないが、縫いは完璧な仕様を用いた。

二人の評価もまずまずだったので安心している。彼らの店に立ち寄る酔客にも、

スーツのチカラとその中身である二人の実力を感じてもらえればと思う。

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