スーツ・ジャケットの手入れは、ブラシ掛けとスチーム通しにつきる。
大昔から最も頼りにされてきた手法だ。この現代に何を原始的な、と思う方もいるだろう。
ドライクリーニングがあるではないか。確かにその通りではあるが、汚れやシミを落とす
クリーニングは完ぺきでも、プレスに難点があったりする。クリーニング屋の店頭で、
自分の服が、無造作にブルーの籠に投げ込まれるのを見て悲しくなった経験のある方も
多いだろう。
クリーニングとひと言で言っているが、一般的にはクリーニングとプレスをセットにしてそう呼んで
いる。スーツの作り手には町のドライクリーニングに否定的な人も少なくない。
さらに、スーツにアイロンを掛ける作業は高度な技術を要する技である。
上衣は本来、体に直接接触しない事になっていた。しかし最近の着こなしでは、Tシャツの上に
直接羽織ったりするから、襟や袖口の汚れは作り手の想像を超える場合もある。
着手が自ら上衣を汚している訳だ。そうでなければ、ブラシ掛けで、埃を落とすだけで充分。
シミは個別に取ればよい。
そしてスチーム(蒸気)の効用。スチームは服地のシワを取り、ひじなどの力が加わって伸びた
部分を復元させる。さらに不快な臭いも取ってくれる。旅先のホテルなどのバスルームに熱湯を
出して蒸気を充満させ、そこに上衣を吊るしておく。思ったより効果がある。生地に依っては含水し
て伸びてフニャッとなる場合もあるが、乾燥すれば元に戻る。間違っても直接濡らしてはいけない。
ホテルのバスタブを用いる場合は、ハンガーやカーテンレールのチェックをお忘れなく。
気がついたら上衣がハンガーからバスタブに滑り落ちて、のんびり入浴してたなんて事になったら
目も当てられない。
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