2016年6月19日日曜日

VOL・73 怒り顔のデザイン  2007・1

雑誌の「チョイ悪」や「モテ服」のフレーズと共に、格好いい大人が増えたのは間違いない。

誌面では、高額ブランドを味のあるモデルが着用するから、それなりに見映えはする。

しかし技術を伴わない解りやすいデザインは、あっという間にトレンドというエクスキューズを

盾に安物に伝播していく。ドレス、カジュアル全般に怒り顔のシャープなデザインが幅を

利かせつつある。服の色や形がトレンドの名の下に定型化されると、コーディネイトは

たやすくなる。着こなす事とは別次元だが、今風ならコンケープショルダー、襟幅細めの

二つ釦のスーツに濃色のシャツ、パープル系のネクタイを合わせればいい訳だ。

映画なら間違いなく悪役のスタイルなのだが、それで「モテる」と記述されるとオヤジは

腰が砕けてしまう。もっと普通の良い服の方が似合うのにと感じる御仁を見掛けると

痛々しくさえ思ってしまう。筆者も恐面(こわもて)のルックス(と人は言う)だが、

心根はそんなことは全くない。むしろ、かなり優しい?

これでも、優しく見える服を心掛けている。

余談を挟めば、最近の車にも怒り顔が多い。

無機質な機械システムとしての優秀さを表現しているのだろうが、有機物である筆者から見れば、

生理的に受付けない。これも同じく技術を伴わない外観だから、モデルチェンジの度に怒り顔が

増えていく。

服に戻って、気になることがひとつ。

ステッチ、穴糸、釦糸に色糸を用いたシャツを、クールビズ以後よく見掛ける。

ギミックによるデコラティブな服は安物にしか見えない。我々作り手は、顧客が喜んでくれるから、

売れるからといって何を作っても良いのだろうか。

格差社会のなせる技か、日本人は何につけても、押し出しの利いた物がお好きな様である。

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