2016年6月19日日曜日

VOL・74 小肥りのすすめ  2007・2

とある美容室の20周年のモチーフとして1冊の写真集が上梓された。

懇意にしているので、2頁にわたり登場させてもらったが、己の写真を見るのは苦手だ。

20代の頃にはどうやって写真映りを良くしようかとさえ思っていた。

サロンのスタッフたちには「オイちゃん、渋くて格好良かったよ」と言ってもらえるのだが、

その度に写真の自分を思い出して冷や汗が出る。

30才を過ぎた頃から、自分が持ち続けている自分のイメージと、ありのままの写真との

ギャップが大きくなってきた。自分はもっとイケてる筈と心のどこかで思っているのだろう。

理性的には十分に諦めているのだが、写真を見るとダメだ。20代の頃のナルシズムが頭を

もたげる。チビ・デブ・ハゲとハンディが3拍子揃っていながら、よくぞここまで着こなしていると

密かに思ってはいる。年齢相応に枯れた味を出せたらいいと自分に言い聞かせる。

年月を重ねて、少し体がユルくなってきた男性も多いと思う。

健康的にも肥満はよろしくないが、スーツを作っている立場として言えば、

小肥りの方がスーツは似合う。

上衣のふくらみも綺麗に出るしウエストのフィット感も痩身の人より綺麗に見える。

ヒップもむっちりの方がパンツのフォルムを支えてくれる。

同じ股下でも小肥りの方が短い足が誇張されない。筋肉質のスポーツマンでも、

現役を退いて若干脂肪がついた方が、スーツ屋としては好きな体型だ。

ただ、そのまま肥り続けて、もう少しやせたらいいバランスのスーツになるのにと、

進言させて頂く人も多いのも事実だ。

格好良さと貫禄の境界線は紙一重といったところだろうか。

具体的には身長に50%を乗じた数値がウエスト寸になるのが小肥りの上限だ。

服は身長とウエストだけで着るものではないから、バストも重力に負けない様に

少しは鍛えたい。

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