2016年6月20日月曜日

VOL・86 スーツのちからⅡ  2008・2

よくあるエピソード。

仕事のできる、クラシックなスーツをちゃんと着こなしたビジネスマン。

昨今はFAXやメールだけでも仕事になったりするので、初めての対面まで意外と時間が掛かる

ケースもある。取引先に出向き初対面とあいなった。

「想像していたイメージと違いますね」。

よくよく聞いてみると、腕のいい営業マンだからチョイ不良(ワル)で、押し出しが効いていて、

どちらかというと水っぽいカッコ良さを備えた人物だと思われていたようである。

ところが、控えめで、知的で、完成度の高い着こなしを見て、印象がさらに良くなっていったという

パターンである。

スーツをはじめとして、シャツ、ネクタイ、靴と全身をコーディネートさせて頂いた立場としては

冥利に尽きると共に、スーツのちからを改めて感じるのである。

メンズファッション誌も然りだ。イバリの効いた強面(こわもて)の服や着こなしでインパクトを与え

ていかないと飽きられるとでも思っているのだろうか、その手法に拍車がかかる。

一部のメンズ誌を除いてはエスカレートするばかりで目を覆いたくなる。

読者は鵜呑みにして、それが世の流れであるかのごとく勘違いする。

逆に、良心的に品性を保った提案をしているメンズ誌はあまり売上が伸びていない。

誇張され捏造された情報ばかりでは、何が良いのか理解しづらい。常々、ファッションは

文化でなく風俗にしか成り得ないと述べているのはそういう事なのである。

カタブツで没個性的な服を提唱しているのではない。

人と違っていれば良しとし、どこか脅迫的な押し出しを服に求めている人の心根が嫌いなだけだ。

若い世代のストリート服を否定はしないが、着こなしの基本は様式と知識だから、

ちゃんと勉強しておかないと、大人になってから困ることになる。

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