2016年6月20日月曜日

VOL・90 薀蓄を少し  2008・06

そろそろクールビズとやらがスタートする頃だ。

上衣を着ていない人はほっといて、スーツの薀蓄を少し。

キヲツケ!と号令かけられたら、両手の中指はズボンの縫い目に。

学生時代によく言われたものだ。その姿勢で両腕の力を抜くと、縫い目から離れて

ふっと前に動く。ここが腕のホームポジションである。

つまりスーツの袖は前に振るようにカーブが与えられている。

良質なクラシックスーツでは当たり前のことである。

ハンガーに吊るした状態では袖が中身(腕)なしでは固定されず、

自重でねじれることもあるが、手を通せば美しいシルエットを描く。

スーツやジャケット以外でも袖をカーブさせ、その機能を謳った服は多い。

バイクウェアに詳しい方は特に理解できるだろう。

稀に袖付け位置を間違えて左右の袖の振りがずれていたりする。そのありさまを「歩いて

いる」と表現する。

続いて襟、それも上襟に関するはなし。

襟が首筋に吸い付くように美しいラインで作られたものを「のぼり襟」という。

カラー(上襟)に丹念なアイロンワークを駆使して生地を立体化することで可能になる。

この工程は、生地のクセを取る(殺す)ことから、「殺し襟」とも呼ばれている。

少々腕を動かしても襟は首に沿い安定した襟廻りを保つ。

上襟の裏に「ヒゲ」と呼ばれる折り返しがまつり留めされている。

スーツが貴重だった時代に、襟を裏返して使った名残。

殺し襟の工程で生地はかなりの力で伸ばされる。

ヒゲなしでものぼり襟を作る事は出来るが、カラークロス(襟の裏地)を

張った後にヒゲを折り返すので、若干のテンションが働き、上襟のハネを防げる。

あなたのスーツに「ヒゲ」はありますか?

0 件のコメント:

コメントを投稿