2016年6月20日月曜日

VOL・97 やさしい着心地  2009・1

オフィスに着いて、あるいは仕事帰りの居酒屋で上衣を脱ぐのは、その方が楽だから?

着ていても肉体的ストレスにならなかったら脱ぐ必要は無いわけだ。

スーツは英国ロンドンのサヴィルロウが聖地であることは間違いない。

しかし、昨今のテーラードな服は、イタリアの南の都市ナポリの影響を色濃く受けている。

まずナポリからイタリア全土に伝播し、それが世界に広がった。

技術的に真似ることが困難な部分はさけて通る服メーカーが多いが、釦使いや、ステッチワーク等

のちょっとしたディテールは、比較的安価なスーツにも盛り込まれている。

日本人にとって、かつてのスーツとは直立不動で胸を張って着る物であった。

どちらかと言えば、着心地は二の次の固くて重い印象がつきまとっていた。

その後に一世を風靡したソフトスーツやらを、人々はとても着やすいと感じてしまう。

未だに大きいスーツが楽だと信じている人も多い。じっとしていると楽でも動くと疲れる。

スーツの場合、腕の運動がすべてだ。

アームホールの大きいスーツでは、腕を上げる度に身頃も一緒に持ち上げる。

つまり腕を上げる度に上衣全体の重さがのしかかる。

さて、クラシックスタイルを引っ張ってきたナポリ仕立て。

見た目はスマートできちんとしているのに着心地はやさしい。

まるでカーディガンだ。

ゆったりした着心地なのに、鏡の中の自分は細身の服を着ているのだ。

恰幅のいい人でもスマートに見せてくれる。

世界中のどこでも、大切な人に会う時は、手段として一番いいスーツを着る。

だが目的が日本と欧米ではいささか異なるようだ。前者は自分への思いやり、

後者は相手への思いやり。

日本人がお洒落をすると稚拙さが見えるのはその辺の心理だろうか。

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